人魚姫6 | 孤独が好きな寂しがりやBlog

人魚姫6

;人魚姫1 @前章の前章の(以下省略)@wrote on 05月10日 04時56分20秒

;人魚姫2 @前章の前章の(以下省略)@wrote on 05月13日 01時02分16秒 

;人魚姫3 @前章の前章の(以下省略)@wrote on 05月19日 07時59分25秒

;人魚姫4 @前章の前章@wrote on 05月21日 06時43分09秒

;人魚姫5 @前章@wrote on 05月24日 13時50分46秒

;同日に5、6をUpしてます。なので、5を読み飛ばす可能性がありますので、念のため付記。

;●●●書き始め●●●

;5/24 7:30



フィリア嬢が荒れている―――。


宮廷パーティの定番だったフィリアのダンスが見られなくなって、宮廷雀はこぞって囃したてるようになった。


寵妃ごときが僭越にも王太子殿下に結婚を申し出ている―――。


多くの貴族は、そんなフィリアの行動を「狂態」と見做して嘲笑した。

下賎の身で寵妃に成り上がったフィリアに対する羨望からくる嫉妬もあったし、

目出度い王太子婚約話の引き立て役でもあったから。


その噂を聞くたび、フィリックスは軽く失望感を抱く。


感情としてはフィリアを手放したくないが、

フィリアと会う度に「結婚しないと死んでしまうから」と五月蝿い(うるさい)事、この上ない。


もともと結婚式を間近に控えている以上、あらぬ誤解を避ける為にフィリアと頻繁に会えない。

それを建前に、フィリックスはフィリアを寝室に呼ばなくなった。


呼ばなくなるから、なおさら荒れる。


流石に物を投げる、当り散らす、という事情に発展した時、フィリックスは頭を抱えた。


「―――夜伽に呼ばなくとも、せめて食事だけでも―――」


そう侍女長から請願されては、否やは無い。

フィリックスはフィリアと食事するようにした。


効果はあった。


夜伽は命じられないのですか、と多少は五月蝿く言われるものの、

人に当り散らす事は無くなった。


フィリックスはそれを聞いて安心したものの、別の人間がそれを憂慮した。


フィリックスの祖父にして、国王が、である。

この事件とも言えぬ事件を聞いて、国王は苦楽を共にした国務尚書(大臣)に相談した。


嫉妬深い女性を寵妃に置くのを是とするか非とするか―――。


もともと、国王はそれを重要視してたわけではない。

軽い―――というほど軽くも無いが―――茶飲み話で話題にしただけだったが、

国務尚書の提言で考えを改める事にした。


「―――寵妃というのは、存外面倒なものです。

 妻を迎える前から寵妃がいる、というのは自然な流れではありますが、

 妻女と寵妃の間で険悪な雰囲気が起こるのは、家の乱れに繋がります。


 言うのを憚られますが、フィリア嬢は、

 容貌や感性は充分以上にありますが、感情に起伏が激しいのが欠点かと存じます。


 理想を言うならば、妻を迎える前にいる寵妃が、

 容貌が平均並みで、詩歌に感性を持ち、落ち着いた為人(ひととなり)で、

 接する人が母親を連想させるのが理想でございましょう。


 なるほど、確かにフィリア嬢は確かに踊りや歌に素晴らしい資質がありますが、

 それが寵妃として相応しいかどうかは、少し判断に迷う所があります。


 また聞くところ、王太子殿下の婚約者も気性の激しいお方とか。

 フィリア嬢が御子をお産みになり、先任という自覚から、寵愛を専有しようとなさると―――」


「つまりは、フィリアは寵妃として相応しくない、という事を言いたいわけだな」


「御意。

 僭越ながら申し上げますと、爵位なり荘園なりを与えられますか、

 どなたかに下賜なさりますのが、よろしいかと」


「簡単に寵妃を下賜できまい。

 ましてや、あの堅物が寵妃を下賜するものか」


「―――既成事実がありましたら?」


「……それは、事実か?」


国王の目が鋭く光る。

国務尚書はそれを受け流しながら、身振りでそれを否定した。


「それはありませぬ。

 宮廷には、そういう下世話な噂が流れておりますが、

 それは事実ではありませぬ」


「脅かすな。

 ただでさえ婚姻を間近に控えたこの時期に、そのような……」


「申し訳ありませぬ。

 ……で、話を戻しますと、フィリア嬢は寵妃に相応しいお方では無い、というのが臣の結論でございます」


「寵妃には相応しくない、そして……先ほどの『既成事実』。

 まさか、先に既成事実を作らせる、というのか?」


「あまり好ましい手段ではありませぬが。

 将来に起こるかもしれない禍根の芽を摘み取るには、最良の方法かと存じます。

 王太子殿下にあらせられましては、激怒なさるかもしれませんが……」


「おそらく、内心では、な。だが、態度には表すまい。

 あれは、そういう性格だ」


「どうなされますか?

 陰険な手段ですので、それに相応しい人間を見繕う必要もありますし、

 何より、やるのであれば、結婚式の前に済ましておく必要がありますが……」


「あてはあるのか?」


「……何人か。

 最悪、フィリア嬢とその男を国外に逃がす事になるかもしれませぬが、

 上手く嵌れば、王太子殿下に最大の忠臣がでるかもしれませぬ」


「忠臣?」


「身分卑しき平民の出ですが、王太子殿下と親しき仲で、優秀な武官が1名。

 彼が泥を被る覚悟がありましたら……あるいは」


「さて、どうするか……」


「臣(わたくし)めに命じれば、最後のお勤めとなる覚悟であたりましょう」


「……なに?」


「銃後の備えを万端にする。

 これこそ、陛下に今まで受けた御厚恩に報いる道でございます」


「自分を巻き込んでまで……か?」


「すでに、老い先短いこの命。

 臣(わたくし)に王太子殿下の憎しみが向けられようと、特に問題はありますまい」


「何故、そこまでして?」


「王太子殿下が好きだからでございますよ。

 ましてや、一国を背負う王太子殿下ともあろう殿方が、

 女性問題で躓くのを見るのは忍びないですし、致し方ありますまい」


「平然とした顔で、そのように申すな。

 予としても……どうすればよいか分からぬではないか……」


「では、このように考えては如何(いかが)でしょう。

 将来(さき)ある若者2人の為に、老骨1人が犠牲になる、というのでは」


「……」


「1人は忠臣を、もう1人は忠臣に相応しい身分を得られることになります。

 ましてや、臣には跡を継がせる子すらおらぬ故、

 忠臣として葬られようとも、逆臣として葬られようとも変りはありませぬ」


「……それでお主は満足なのか?」


「自己満足に過ぎませぬが」


「だから、そのように平然と……。

 いや、それはいい。

 だが……」


「陛下にそのように心配されるだけで、

 臣がどのように陛下に信頼されておられるか、身に染みて分かります」


「お主……。

 わかった、お主の好きなように致せ」


「ありがとうございます。

 これで……臣も、最期の最期で王太子殿下の御為に役立てて、幸せでございます」


「それで……どのようにしてフィリアを不義密通させるのだ?」


「それは、陛下は存じない方がよろしいかと」


「……そうだ、な。

 確かに……そうだ。

 お主は……本当に予に尽くしてくれた。礼を言う」


「何の。

 陛下より受けました御厚恩に比べれば、大したものではありませぬ。

 この命を以って(もって)、返させていただく所存にございますよ」


国務尚書は、深く頭を下げた。





「……それでは、自分がフィリア殿と密通しろ、と申されるのですか?」


「いや、違う。ベッドテクニックに長けた男を使い、フィリア嬢をその男の虜にさせる。

 その間、お主にはフィリア殿と懇意の仲に……あくまでプラトニックな関係で懇意になってもらい、

 時期を見計らって、不義密通の事実を殿下にお知らせする」


「確かに風聞を聞く限りでは、フィリア殿の良い話は聞きません。

 また、それは、知りながら殿下を欺く事になります。自分には、そのような非道な事はできません。

 ご容赦ください」


「お主が、そのように言ってくれるから、頼んでおるのだ。濃(わし)はお主の忠誠心、および能力を高く評価しておる。

 だが悲しむべき事に、お主は平民でしかない。

 つまり、高級将校になる可能性は相当低い。

 また、なれるとしても、相当時間がかかる事になろう」


「……。」


「王太子殿下の為に、お主に泥を被って欲しい。

 もっとも、濃はそれ以上の泥を被る事になるやも知れぬが……」


「……。」


「フィリア嬢は殿下の御為にはならぬ。

 お主が、フィリア嬢を受け入れてくれれば……それだけで殿下の御為になるのだ。

 了承してくれるか?」


「何故、そのような回りくどい方法を?

 殿下の御為でしたら、放逐するなり殺したりすれば済む話ではありませぬか?」


「……では聞くが、殿下は簡単に人を放逐したり殺したりするような為人(ひととなり)か?」


「確かに。

 ……それができるような殿下ではありません」


「フィリア嬢は、殿下の御為にはならぬ。

 じゃが、殿下は簡単に人を見捨てるような為人ではない。


 だから濃の手筈でフィリア嬢を不義密通させる。

 さすれば、殿下も王族である以上、フィリア嬢を王宮から追放せざるを得まい。

 その受け入れ先として、お主を選んだのだ」


「何故、自分なのです?」


「フィリア殿に爵位と荘園が与えられた後、お主に下賜されて、

 その爵位を受けたフィリア殿と結婚すれば、爵位はお主のものになる」


「……それはどういう意味です?」


「お主がフィリア嬢を妻として受け入れる覚悟があるなら、

 爵位がお主の手に入る、という事じゃよ」


「それは……!」


「確かに、見た事も無い、好いてもいない女性を妻に迎えるのに嫌悪感を感じるのも分かる。

 だが、お主の忠誠心に報い、実力を発揮させるには、最良の方法なのじゃよ。

 あまり、好ましい方法ではないがな」


「自分が、それを出来る人間と思われますか?」

 それに、自分とフィリア殿の2人が不幸になるかもしれませんが……」


「お主には、年老いた母と、年の離れた妹3人がいたな。

 彼女らに貧しい生活をさせたくなければ、それで解決するが?」


「殿下と、母と、妹の為に、自分の意志を殺せ、ですか……」


「お主には、酷な事と分かっている。

 だが……殿下の御為にも、是非やってもらいたい。

 やってくれるか?」


「条件が二つ……いえ、一つあります」


「何かな?」


「母が……今、病気で伏せっております。

 良い医者をすぐに手配して下さい。

 ……お願いします」


「分かった。それであれば、最高の医者を手配しよう。

 まだ……条件があれば聞くが?」


「いえ。他はありません。

 たとえ、自分がフィリア殿を愛せなくても、フィリア殿が自分を愛してくれなくても、

 殿下、そして母や妹の為でしたら……自分の私事は、九牛の一毛に過ぎません」


「お主に感謝する。

 本当にありがとう」


「……礼には及びません。

 それよりも、医者の手配をお願いします」







;●●●ここまで書き終わり●●●

;5/24 9:00




/*****************

既定路線の会話方式なんで、8.61KBは1時間半。

書いた後に読み返していたので、実質的には……1時間と15分くらい?

対時間で文章量を稼ぐ(?)なら、この方式なのかも。

もっとも、これで最後、これで最後、とか言いながら、長々と続いているなぁ……。

それもどうかと思うことしきり。


でもまぁ、前のやつと今回のんは、裏面の事情、という事で、再プレイの時に出てくる仕様にしたら

マルチシナリオっぽくなるな。そうやってポジティブに考えていこう。うん、そうしよう。



次は……密通の噂(?)を事実にして、

華やかな○を簡単に書いて、

○○に潜り込んだフィリアを書いて、

○○○○フィリアを書いて……で、そこで選択分岐を入れるから、そこで終わり。


エピローグは……長くはなるような……。

選択分岐でフィリアがどーなるかで、裁判を書くことになるから……。

○○○○だけなら裁判にゃならんが、○○○○○○だったらじゅーぶん裁判(っつか問答無用で死刑)になるからにゃぁ。


そーなると、あと、2回か。

結構、分量が多くなったな……つらいぽ。



っつか、この武官の名前考えなきゃ。

適当でもいいんだろうけど……うん、今決めた。

アントニオで。

イタリア系の名前だけど、まぁいいや、それで。