えろげの経営戦略(みたいなん)
まず、PC-News様のサイト にある「全国美少女ソフト売り上げランキング」がソース、というのを前提条件に。
惜しむらくは売り上げ本数という絶対数が分かればいいんでしょうが、まぁ無料で手に入るデータなんで、そこまで言っちゃ贅沢か。
つい最近まで、PC-News様の存在を忘れてしまってた、という痛恨事を思い出し、慌ててPC-News様のサイトからランキングのデータをフラッシュメモリ@USBにぶっこぬいて検証。
ざっと見た感じでは、栄枯衰勢そのままやなぁ、という入れ替わり立ち代りの速さ。
トップだったソフトが次期(半月後)にはものの見事に新しいソフトに取って代わられて20以上もランクダウンするという目まぐるしさ。生き急ぎすぎやお前ら。
…なんて目に付きやすいところの感想はひとまず置いといて。
(ちなみに、データ転載お断り、とPC-NEWSにありましたので、転載ではなく編集してUpします)
ぱっと見た感じでは、G.J?様の「姉とボイン」というタイトルが興味を引く。
いや、えちぃ方じゃなくてランキングの方が。
定価…じゃなくて希望小売価格(税込み)が6090円とミドルプライスで8期(4ヶ月)50位以内のランキングを果たしているのがミソ。
1期目:1位
2期目:9位
3期目:23位
4期目―――雑誌休刊期なのでデータなし(3期と合同で集計)
5期目:50位
6期目:18位
7期目:38位
8期目:25位
9期目:ランク外
1期目(2004年10月後半)でトップを取って4ヶ月ほど売り上げを維持。
多分、これがゲーム制作会社の理想とする「安定経営」だと思う。
ビッグタイトルではなくとも、こういうやり方で「エロゲー業界」を生き抜いていける、という見事なまでのサンプルと言えるだろう。
ちなみに同ブランドで「双子ノ母性本能」というタイトルがある。こちらは税込みで「9,240円」とハイプライスだが、CD-ROM版・DVD-ROM版と併せて4期2ヶ月ほどランクインしてる(CD-ROM版は出荷数を限定している模様)。
1期目:5位
2期目:10位(CD-ROM版は9位)
3期目:35位
4期目:35位
5期目:ランク外
(上記、DVD-ROM版)
こちらは3/4期目が微妙なラインにランキングされてるけれども、最初の2期分で制作コスト分以上のものは稼いでいる(だろう)からさして問題ない。
なお、「双子ノ母性本能」は2004年5月、「姉とボイン」は2004年10月発売。
それぞれにちゃんと利益を上げ、ユーザにブランドイメージを売る事が出来た、という観点から見ると、零細企業(かどうかは知らないけど)としては充分以上の出来と言える。
あと、見逃せないポイントがTYPE-MOON様の「Fate/stay night」。ただし、見るのは「通常版」の方。
驚くべき事に、144号(2004年3月後半)から今に至るまでランキング50位以内をキープし「続けて」いる。
これが意味するところは単純だろう。
もともとサークルが母体という事を考えれば、「営業」というのを知っている人間がいる、と推察される(あるいは企業化した時に付いた参謀かもしれないが)。
そうしておいて、供給フォーマットを作った人間がいる。
これはエロゲー業界では画期的な事だろう。
あのCLANNADとか下級生2とかいったビッグタイトルでもそこまで「売れ続ける」という現象は生み出していない。
エロゲー業界の人間は、「Fate/stay night」がバカ売れした、という目に付きやすいところではなく、「売れ続けている」という所に目を向けるべきではないだろうか。
ちなみに、2004年以降で7期(3ヵ月半)以上売れつづけたラインナップは以下のとおり。
戦乙女ヴァルキリー 「あなたに全てを捧げます」:15期:ルネ:9,240円
巣作りドラゴン:10期:ソフトハウスキャラ:9,240円
姫騎士リリア ~魔触の王城に堕つ~:10期:Black LiLiTH:2,079円
斬魔大聖デモンベイン:9期:ニトロプラス:9,240円
大番長:9期:ALICESOFT:8,925円
姉とボイン:8期:G.J?:6,090円
MapleColors H:8期:クロスネット:5,800円
人工少女2:8期:イリュージョン:9,240円
下級生2:8期:エルフ:9,240円
姉、ちゃんとしようよっ!2:7期:きゃんでぃそふと:8,190円
魔女の贖罪:7期:ALICESOFT:2,940円
放課後 ~濡れた制服~:7期:BISHOP:8,800円
君が望む永遠 ~DVD Specifacation~:7期:age:7,140円
マブラヴ:7期:age:9,240円
(注:マブラヴは2003/2/28発売作品。1年後に7期連続でランクインしている
これはTYPE-MOON様と違った偉業と言える)
ざっと見る限り、売れ続けているのはシュミレーションゲームか安価なゲームが多い。
やはり「売れつづける」には何かしらの理由があるんだろうか。
当然、小売店の営業努力というのもあるのも否定しないけれども(というより、そちらの方が大きいだろう)
他に特徴があるとしたら…あそこか、と思ってたらビンゴ。
少し古いデータになりますが、2002年8月から
>「アリスソフトが『妻みぐい』の大ヒットを
>飛ばしてから一時期ロープライスが注目されたが、
>今はそれほど参入しているわけではない。
>うま味が少ないと判断したのだろう。
>低価格の分だけ規模も小さくて済むが、
>それでユーザーを愉しませるのは
>決して簡単ではないということだ」
と書いてあるが、それは事実というダイヤモンドカットの一面しか見ていないと思う。
2002年8月(105号)から2003年3月(119号)までを丹念に見ると、それが如実に表れている。
(超昂天使エスカレイヤーの売り上げランキング)
105号:1位
106号:13位+2位
107号:8位+11位
108号:ランク外+42位(+1位)
109号:27位(+2位)
110号:22/42位(+2/13位)
111号:28位(+6/16/37位)
112号:42位(+20/27位)
114号:ランク外
115号:29位(+35/40位)
116号:42位(+36位)
117号:42位(+1/37位)
118号:39位(+12位)
119号:36位(+8/31位)
(113号は112号との合併号となっている)
データは2002年のなので、現在と当てはめるには少し無理があるかもしれない。
また、売り上げ本数では無くランキングから見た結果なので、(想定される)利益がどれほど上がっているのかは分からない。
だが、塵も積もれば何とやら、という所だろうか。
いわゆるロープライス(2000円から3980円@鏡氏)が売れた(正確には売れつづけていた)というのは確かに事実。だが、単価が安い以上、それほど利益が上がったかどうかは分からない。
しかし、超昂天使エスカレイヤー@本命@単価が高いソフトが売れ続けている側面がある。
通常、これが可能なのは「知名度が高い」ブランドないしメーカになる。
アリスソフト、という固有名詞はエロゲーユーザの中では上位(というかトップクラス)にあたる。だからこそ、この経営戦略が成り立っているのだろう。
ぶっちゃけて言うと、「どんぶり勘定でプラス収支になればいい」という考え方だ。
なまなかのメーカ・ブランドではこの方法は取れない。だが、なまなか以上のメーカ・ブランドであればこの手法が取れる。アリスソフト様制作の「王道勇者」ならぬ「王道経営」ではある。
アリスソフト様以外のメーカ・ブランドのミドルプライス以下(ロープライスを含む)のえろげの売り上げが思わしくない(ランキング下位が多い)のは、営業・ゲーム性・ブランドイメージもさることながら、その点を見落としているからだろう。事実、アリスソフト様はそれ以降ミドルプライス以下のえろげを積極的に制作・販売していない(売り上げが思わしくなかったか、クリエーターが磨耗(?)したからかは不明)。
もっとも、これと比較されるもので、サーカス様になろうか。
1050円で買えるノベルゲーム「終の館」シリーズが5編ほど制作されている(142号/2004年3月前半~154号/2004年8月後半までランクイン)。
これと同時期に発売されたのが「D.C.P.C. ~ダ・カーポ プラスコミュニケーション~」。
結果としてみるなら、「D.C」のランク維持に貢献しているか、というとそうでもない。
普通の「売れ筋ソフト」と同程度の期間しかランクインしていない。
「終の館」シリーズのデータを見ると、
・終の館~恋文~/2004.02.27発売(1番目)
・終の館~双ツ星~/2004.03.26発売(2番目)
・終の館~罪と罰~/2004.04.30発売(3番目)
・終の館~檻姫~/2004.05.28発売(4番目)
・終の館~人形~/2004.06.25発売(5番目)
で、
1番目 2番目 3番目 4番目 5番目
発売1期目: 3位 15位 15位 8位 8位
発売2期目: 1位 31位 31位 12位 15位
発売3期目:32位 23位 23位 32位 36位
発売4期目:23位 ―― ―― ―― 44位
発売5期目:36位 ―― ―― ―― ――
発売6期目:32位 ―― ―― ―― ――
発売7期目:―― ―― ―― ―― ――
1期=半月
――→ランク外
これを縦軸を(発売以後の期数ではなく)時間軸、横軸をタイトルで表を作ってみると、別の角度が見える。
一応、最初の「恋文」は6期3ヶ月はランキングに入っている。
でも、2作目は3期でランク外に落ちている。
以降、3~4期を過ぎればランク外に落ちている、というのは何を意味してるんだろう。
小売店に届かない(流通に乗せられていない)か、ユーザからそっぽを向かれてしまったのか。
ユーザからそっぽを向かれる、にしてはランクも3月期を除けば10位以内に入っているを考えれば、ユーザからはそっぽを向かれていない、と考えるべきだろう。
となれば、小売店に届いていない、というのが原因か。
その理由は何だろう。
1つ目の理由は、ナチュラルに「単価が安すぎる」のが小売店が嫌がっている、と想定される。
ただ、パッケージそのものはトールケース(っていうんだっけ?)と同サイズだったと覚えているので、販売価格対のスペース占有量はそれほど…って結構あるか(3倍くらい?)
2つ目の理由は、小売店に(流通に)卸そうとせずに作っていない、か。
ただ、メーカは儲かると判断したら卸すだろうから、少し考えにくい。
やはり単価対のスペース占有量が問題なのだろう。
単価を上げて、そちら(ヲタの喜びそうな方面)の量・質を増やすか、CD-ROM(あるいはDVD-ROM)ケースでスペース占有量を減らす方向で販売するか。
(ランク10位以内という)実績があるので、対策さえ立てれば、安定した売り上げを見込める手法かもしれない。
ざっと見る限り、リニューアル版などはあまり売り上げに貢献しない、というのもランキングを見ればわかる。
自分がユーザの立場になってみれば、それは是と言える。
MS-DOSの頃のゲームであれば、リニューアル版は買ってもいいかな、とは思うかもしれない。
事実、「黒の断章 ~THE LITERARY FRAGMENT~」には食指が動きかけた。
しかし、「過去にプレイした事がある」というのは、(出費を抑えるという意味で)最後の最後で踏みとどまる要素になってしまう。
それが致命的だろう。
そういった意味では、あまりリニューアル版は好まれない。たとえ、安かった(ミドルプライス)としても。
ネット接続させる「ネット接続」版も売り上げランキングを見る限りランク維持など現象は生み出していない。
よく考えたらそうではある。
更新頻度の高いセキュリティ・ウィルス定義ファイルなどならともかく、それ単体で稼動して損ではないアプリケーションをネット接続(認証)しても、さほど意味が無い。店頭価格でも1000円~2000円程度の差しかない事情もある。
中古販売に回されるのが嫌だ、というのは分からないでもないが、家庭用コンシューマ機でも中古販売が存在しているし、そもそもエロゲーの中古販売が市場規模が大きいのは小売店の営業努力によるものだ。間違った方に技術・資本をつぎ込んでいるとしか思えない。
ざっくりとデータを見てみた限り、こんな感じ。
何にせよ、販売本数が分からない以上正確なものではないですし、企業として利益があがっているか、という点が不明ですので…。
ただ、自分が言いたいのは「多く売れるのも大事」だけど、「売れ続けるのも大事」だよ、と思っています。
まぁ「Fate/stay night 通常版」のように1年以上売れ続ける現象は難しいでしょうが、せめて6期3ヶ月維持できたら大成功、4期2ヶ月は売れ続ける(後は端境期などで何かしらカバー)ように出来たら…企業の追い求める(べきの)利益は確保できる、と思っています。
っつかナチュラルに営業に出回るのが大切、という事で。