人魚姫5 | 孤独が好きな寂しがりやBlog

人魚姫5

;人魚姫1 @前章の前章の(以下省略)@wrote on 05月10日 04時56分20秒 

;人魚姫2 @前章の前章の(以下省略)@wrote on 05月13日 01時02分16秒  

;人魚姫3 @前章の前章@wrote on 05月19日 07時59分25秒 

;人魚姫4 @前章@wrote on 05月21日 06時43分09秒

;●●●書き始め●●●

;5/23 4:45


「結婚しないと、私が死ぬ―――?」


一体、何のことか。


フィリックスには、フィリアの言った事が分からなかった。


言葉の意味はわかる。

フィリアの口から出た、その言葉の裏面に何かあるのか。


何がそう、フィリアに言わせたのか。


考えようとしたが、それを即座にこう解釈した。


―――婚約が事実上、成立したのがバレた。


だからこそ、フィリアは「私と結婚して欲しい」という思いを込めて、

「私と結婚しないと、フィリックス様は死んでしまう―――」

と言ったのだろう。


一瞬、笑いかけたフィリックスだったが、

フィリアが存外に真剣な面持ちであったため、笑うのを止めた。


嫉妬からくる妄言―――。

それがフィリックスの判断だった。


「フィリア。

 何故、私は君と結婚しないと死んでしまうのかな?」


フィリックスは、荒唐無稽な話から、子供をあやすようにフィリアに訊ねた。


「実は―――」


自分がセイレーンだった事。

海難事故の時、フィリックスを助けた事。

フィリックスと再会したいがため、人間となったこと。


そして、人間となるために薬を貰った際に交わした、老婆との契約の事。


フィリアは、今までの事を全て話した。

―――姉たちから貰った、銀のナイフと、それに関する話を除いて。


一通り、話を終えたフィリア。

フィリックスは、窓の外に映る月夜を眺めたまま、その話を最後まで聞いていた。


しばらくの間、沈黙があったが、

フィリックスは、フィリアの隣に座り、フィリアの髪を撫ぜた


「あの海難事故の時、

 私を助けてくれたのは君だったんだね、フィリア」


「―――?」


フィリアには、何を言われたのか分からなかった。


「あの時の事は忘れていないよ、フィリア。

 確かに、あの時助けてくれた女性の面持ちは君にそっくりだ。

 お礼を言わなきゃいけないね。―――あの時は、ありがとう」


何故、その事を―――?

死ぬ、という話はしないの?


フィリアは、混乱しながらフィリックスの言葉を聞いていた。


「しかし女性というのは、大人になれば顔立ちが変わってしまうね。

 あの時は、まだ女の子の顔だったから、今まで気付かなかったよ。

 どこかで見た事があったような気はしてたけど、ね」


フィリックスがフィリアの頭を抱きかかえ、自身の胸に優しく押し付ける。


「あの時は、ただ可愛いな、と思っていた。

 そして、今では綺麗になり、そして私を愛してくれている。

 こんなありがたい事は無い」


「……。」


フィリックスの温もりと匂いを感じながら、フィリアは黙りこくっていた。


「フィリア。

 私の事……好きかい?」


「……?」


「私は、君の事を愛しているよ」


「……。」


「一生、私の側にいてくれるかい?」


「フィリックス様……」


「フィリア。

 私の側に、ずっといてくれるかい?」


「……はい」


フィリアはフィリックスの温もりと匂いに包まれたまま、

ただ、ひたすらにフィリックスを感じていた。




その日以来、フィリックスは子供をあやすようにフィリアと接していた。


それに気付いた侍女長が不審に思って訊ねると、フィリックスはこう答えた。


「フィリアは、夢見る少女のように結婚そのものに憧れを抱いている。

 私が別の女性と結婚したら、嫉妬に狂うかもしれない。

 寵妃という自覚を持てなかったら―――少々惜しいが、手放すしかないな」





それよりしばらくしてから。


フィリックスの王太子(王位継承権第一位)冊立の発表があった。


フィリックスの母親が名も無き漁民の娘、という身分の低さを問題視する貴族・騎士も若干いたが、

それ以外に国王の血をひく男児がいない事、未発表ながら婚約相手に裕福な外国の王女がある事など、

消極的な賛成意見が大勢を占めた。


その一ヵ月後、王太子の婚約発表があり、

これでフィリックス王太子は国内外から協力な支持を得ることになった。


正式な婚約は一ヵ月後、半年後に結婚と、国内ではその噂で持ちきりだった。


その晴れやかな噂の中―――

フィリアの心は、重く、沈んでいた。


「すまないが、1ヶ月ばかり留守番を頼むよ―――」

フィリックスは留守にする理由もフィリアに告げず、そのまま出かけた。


婚約発表の日、フィリックスは国軍視察を経て、婚約の儀式を行いに将来の王妃の母国に赴いた。


『―――もし、お前さんが惚れた男が別の女と結婚したら……その男の命を貰おう。』


フィリアは、あの老婆との約束事を思い出していた。


あれは事実なのか。

本当にフィリックスは死んでしまうのか。


そもそも、どうやってフィリックスの命を奪うのか。

いつ、フィリックスが亡くなる事になるのか。


様々な思いが胸に去来する。


その去来する思いを胸にしながら、

フィリアと誼(よしみ)を結ぼうとしている貴族主催のパーティに出席する。


軽やかに舞おうとしても、足が動かない。

軽やかに歌おうとしても、声が出ない。


フィリアの心は晴れないまま時は流れ、フィリックスは公務を終えて戻ってきた。




フィリアは、戻ってきたフィリックスを捕まえて、フィリックスに再考を求めた。


フィリックスの言葉は明快で、

フィリアとは結婚できない、別の女性と結婚する事になる、

結婚せずともフィリアとは今までの生活を続ける。


フィリックスは、特に

「今までと同様フィリアとも会うし、今までと同じ生活を過ごせる」

という点を強調した。


しかし、フィリアにとっては『結婚できない』という事情が重大であった。

何故なら、老婆が「命を貰おう」と言ったのだから。


話は平行線を辿り、フィリアは涙を流しながら逆上していった。


無論、フィリアに命を助けられた時の事情も、忘れてはいない。


だが、それはフィリアがセイレーンであった事の証明であっても、

「結婚しなければ死ぬ」というのはあまりにも話が突飛しすぎている。


フィリックスは、どんなに言っても聞かないフィリアを持て余すようになった。



1.フィリアを説得するのを諦める


2.折衷案として、真似事の結婚式を行うように提案する

  (正式の結婚式が終わってから、形式に則っていない結婚式を挙げる)


3.折衷案として、真似事の結婚式を行うように提案する

  (正式の結婚式を終える前に、形式に則っていない結婚式を挙げる)



;●●●ここまで書き終わり●●●

;5/23 6:30

;続き@人魚姫6 @wrote on 05月24日 14時20分42秒 


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予定では、ここでファイナルにしようと思いましたが、選択肢が入れる余地があるじゃん、という事で一旦ここで区切る事にしました。

テーブルトークRPGをやっているせいか、こういう妙ちくりんな選択肢を考えちゃうのも微妙な感じですが……。


とはいえ、これでマルチシナリオっぽくなりますか、少しは。

2.及び3.の選択肢は、「痕」のように1.の物語が終わってから出る、という具合になりますね。

そうでなきゃアンデルセン童話のように、人魚姫の美しい死に様(?)が出ませんから(^^;


あ、でも、普通に2.の選択肢に進むようにした方がいいのかな?

もっとも、そうするとフィリアがフィリックスを殺める動機が無くなってしまう……。

後付けで「それでも(当然)死ぬよ」とすればいいんだろうけど。



ちなみに、今回は1時間45分で5.61KB。

何か、章数が増えていくたんびにペースが落ちてるような気がします。ばぅあ。